自由曲面光学素子

自由曲面とは?

「自由曲面」は、対称性などの制約の無い、なめらかな曲面全般を指す用語です。例えばXY多項式の様な解析関数や、三次元CADを用いてモデリングしたポリサーフェスなど、幅広い方法で定義されます。表現の自由度が高く、光学素子のレンズ面、反射面に用いることで、軸外しの光学系や上下・左右で特性の異なる光学系において、光学特性の向上や光学素子の枚数削減・ユニットの省サイズ化などに大きな効果が期待できます。
自由曲面は一般的に軸対称性を持たないため、通常レンズ加工機としてイメージされる超精密旋盤では加工を行うことが出来ません。自由曲面の加工においては3~5軸の軸構成を持つ超精密多軸加工機を用いる必要があります。光学素子に求められるサブμm以下の形状精度を実現するためには、加工機本体だけでなく、回転工具の設計や最適な加工パスの選択とCAM(※)ソフトウェア(※Computer-aided manufacturing)の整備、数時間~数日に及ぶ仕上げ加工時間での位置決め安定性を確保するための恒温・防振環境などが必要不可欠です。形状測定、補正加工においても加工同様の品質が求められるため、超精密旋盤による回転対称非球面の加工と比較して、難易度が格段に高くなります。
ナルックスでは長年、自由曲面を採用した光学素子を設計・製造しており、多くの設計特許と製造技術を保有しています。

ナルックスの自由曲面加工の特徴

  • 金型加工、樹脂成形を考慮した光学設計、製品設計段階での最適化
  • 長時間の仕上げ加工の安定化(温度・振動などの対策)
  • 自由曲面に対応した高精度な評価技術と補正技術

製品例

レーザビームプリンタ用fθレンズ

fθレンズは、y=fθの関係式で表現される歪曲特性を有しています。ここでyは像高、fは焦点距離、θは半画角(入射角)です。これらレンズは、レーザビームプリンタ用の走査光学系で使用されています。
ナルックスでは1989年からレーザプリンタ用の樹脂製自由曲面fθレンズを生産しています。従来レーザプリンタ用走査光学系では複数のガラス球面レンズや長尺のシリンドリカルレンズの組み合わせが必要でした。自由曲面の採用により、収差補正の自由度が向上し、走査光学系で使用されるレンズ枚数の削減に大きく寄与しました。レーザビームプリンタの小型化、低コスト化に貢献してきました。

ナルックスのレーザプリンタ向けfθレンズの特徴
  • 光学設計、製品の解析から金型加工、生産、品質保証までを一貫対応
  • 内部のひずみによる複屈折や吸湿による光学特性変化を考慮した製品設計
  • 独自の機能評価装置による品質保証

自由曲面ミラー・プリズム

自由曲面ミラーは自由曲面を反射面とする光学素子です。軸外しの反射光学系では、回転対称形の光学素子では収差の制御が困難であり、自由曲面の採用が不可欠です。ナルックスでは長年、カメラのファインダー向けに自由曲面プリズムの生産を行っていました。昨今ではカメラファインダーはデジタル化が進み、この用途での利用は激減していますが、HUD(Head up Display)、ARグラスなど、自由曲面ミラー・プリズムを用いた反射型光学素子は多くの製品で採用されています。
反射光学素子は、樹脂では透過しない波長帯でも使用できる事や、色収差が発生しない事も特徴です。ナルックスでは、複数の自由曲面ミラーを用いた、反射光学系ユニットも作製しています。

ナルックスの自由曲面ミラーの特徴
  • 対角約200mmまで対応
  • 表面粗さRa5nm以下(面粗さはミラー形状に異存します。詳細はお問い合わせください)
  • 高反射コート、ハーフミラーコート等の成膜